昭和10年8月 台風
● 災害の原因となった気象現象
9月21日頃から本州南岸沿いに前線が停滞し四国沖に低気圧が発生したことにより、利根川上流域は連日雨となりました。日向灘を北上した台風は24日四国に上陸、翌26日、次の台風が東海上をかなりの速度で北上しました。これら2つの台風は停滞していた前線を刺激し、山梨・群馬を中心として関東一円に豪雨を降らせた。利根川上流域での降雨は烏川流域に集中し、倉田村で総雨量402.5mmを記録しました。
(*1)
● 災害の概要
洪水は烏川・吾妻川流域に集中し、高崎市西部では、24、25日の2日間で300~400㎜の豪雨が10時間以上降り続き、烏川や碓氷川上流で山津波(土石流)が発生し、群馬郡で40人、碓氷郡で83人の死者が出ています。
(*1)
また、未改修の無堤部や旧堤部でも越水被害が発生しし、高崎市内では、家屋倒壊13棟、家屋浸水1,530棟の被害が出ており、救護活動中に7人が激流で命を落としています。
(*2)
利根運河左右岸が越水・破堤し、さらに小貝川筋左岸高須の堤防が破堤し、利根川下流域では、浸水面積12,600ha、家屋損壊109棟、浸水家屋5,638戸を記録しています。
(*3)
烏川流域では、昭和10 年の災害に対する措置の一貫として昭和11 年より直轄砂防事業が着手されました。
また、この洪水と昭和13年の洪水を踏まえ、利根川では八斗島の計画洪水流量を1万トンに改めた利根川増補計画が策定されました。
● 洪水氾濫区域(不明)
● 被害状況
浸水面積 |
利根川流域12,600haha |
家屋損壊 |
利根川流域109戸(氾濫箇所9箇所の合計)、群馬県下(烏川・吾妻川流域)1,786戸 |
家屋浸水 |
利根川流域5,638戸(氾濫箇所9箇所の合計)、群馬県下(烏川・吾妻川流域)17,331戸 |
死者・行方不明 |
群馬県下(烏川・吾妻川流域)257人 |
負傷者 |
群馬県下(烏川・吾妻川流域)190人 |
堤防決壊 |
利根川流域 氾濫箇所 9箇所 |
その他 |
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(参考資料)
*1 国土交通省>利根川水系砂防事務所>烏川流域>昭和10年台風(通称:烏川災害)
*2 高崎市>市の概要>歴史>たかさきの100年(金井千廣による記録)
*3 利根川水系>河川整備方針>既往洪水の概要
*4 利根川下流河川事務所>水防・治水の歴史>過去の洪水記録
*5 烏川流域における土砂災害履歴の特徴