荒川水系の洪水履歴
災害(水害)発生時期 災害名称 被災地域 災害の状況 要因 特徴 備考
西暦
年月日
和暦 (水系本支川、自治体名など) (浸水被害等の状況) (水文学的特色を含む)
1910年8月11日
(8月8日~13日)
明治43年 東京大洪水

(関東大水害)
(明治43年大洪水)
2個の台風と低気圧停滞に
伴う集中豪雨・暴風雨
荒川水系流域全体 浸水戸数:262,595戸
(床上:192,613戸、床下:69,982戸)
家屋全半壊及び流出:18,147戸
非住宅:10,547戸
●河川氾濫
流域平均三日間雨量:477㎜
堤防決壊(埼玉県314箇所)
埼玉県西部や北部に人的被害が多く、床上浸水被害は
県南部や東部と東京(江東デルタ地帯)が多かった。
東京など下流域の水が引くのは2週間後、埼玉の低地で
地面が見えるようになったのは12月ということもあった。
荒川改修計画策定(M44年)及び荒川改修工事の直接的
動機となった。
具体的な工事:東京の下町を守るための荒川放水路開削工事
(明治44年着工~昭和5年完成)
1917年9月30日 大正6年 台風 豪雨と満潮時の高潮 下流域河口部、東京湾沿岸   ●高潮
東京湾沿岸の高潮・高波等風浪による被害甚大
 
1938年6月28日~7月8日 昭和13年 台風 梅雨前線と台風による大雨 荒川水系中下流域   平地性豪雨  
1941年7月10~13日
7月19~23日
昭和16年 台風 関東北部に停滞の梅雨前線と
台風による大雨
荒川水系中下流域   ●中小河川氾濫
中小河川の破堤による浸水・冠水被害大
岩淵水門付近において計画高水位を超える水位
暫定的水位上昇対策(堤防嵩上げ、低水路拡幅など)の契機
1947年9月14~15日 昭和22年 カスリーン台風 台風襲来前の長雨と
台風による大規模豪雨
荒川水系流域全体
(関東地方一円)
浸水戸数:204,710戸
(床上:124,896戸、床下:79,814戸)
家屋全半壊及び流出:509戸
●河川氾濫
流域平均三日間雨量:466㎜
岩淵地点最大流量:約10,560㎥/s
戦後最大、大正昭和でも最大の水害
上流域山間部で土石流災害
扇状地急流河川での洪水土砂災害
本川久下地先及び入間川各所で破堤し、利根川の
破堤(栗橋付近)と合わせて埼玉と東京の沖積低地部が
濁水の海と化した。
明治以降の荒川水系においては、明治43年大洪水ととともに
既往最大クラスの洪水とされ、荒川水系河川改修工事計画の
改訂をはじめ、水害対策見直し検討の契機となった。

※荒川水系における既往最大洪水(=実績最大洪水)は、
氾濫痕跡や水害記録文書などから寛保2年(1742年)の
洪水と考えられている。
1948年9月16日 昭和23年 アイオン台風 豪雨と高潮 荒川水系中下流域
(南関東)
河口部における高潮と重なる浸水被害あり ●高潮
関東南西部山間地の豪雨
下流河口部・東京湾・相模湾で高潮被害発生
下流河口部の高潮対策について見直し検討の契機となった。
1949年9月1日 昭和24年 キティ台風 満潮時の高潮 荒川水系中下流域
(南関東)
河口部における高潮と重なる浸水被害あり ●高潮
雨量は比較的少ない台風であったが、上陸が満潮時と一致
下流河口部・東京湾等で高潮被害発生
下流河口部の高潮対策について見直し検討の契機となった。
1958年9月25~26日 昭和33年 狩野川台風 豪雨 荒川水系中下流域
(南関東)
浸水戸数:505,574戸
(床上:135,189戸、床下:370,385戸)
(戸田市の7割が浸水被害を受けた。)
●中小河川氾濫・内水氾濫
流域平均三日間雨量:282㎜
岩淵地点最大流量:約6,540㎥/s
上中流域の支川氾濫、下流域内水氾濫による浸水被害
荒川水系流域に隣接する東京山の手の内陸中小河川も
氾濫し浸水被害が見られた。→いわゆる「山の手水害」
支川芝川の河川改修事業(芝川水門、新芝川排水機場建設など)
促進の契機ともなった。
1959年9月26~27日 昭和34年 伊勢湾台風 豪雨と満潮時の高潮 流域内では河口部 河口部における高潮と重なる浸水被害あり ●高潮 荒川水系流域における顕著な水害ではないが、S23年アイオン台風、
S24年キティ台風とともに、河口部東京湾高潮対策計画を立てる
契機となった。
(河口から堀切橋までを高潮区間に設定し、S38年より堤防工事施工) 
1974年8月31日~9月2日 昭和49年 台風16号 豪雨 荒川本川の河川区域内(堤外地) (堤外地の河川構造物等の被災が大きい) ●河川構造物被災
山沿いでの記録的豪雨
(飯能市刈場坂峠で総雨量495㎜を記録)
本川の護岸・堤防法面破損等43箇所
S33年狩野川台風以来の大雨
1982年9月10日 昭和57年 台風18号 豪雨 入間川、新河岸川など 浸水戸数:19,294戸
(床上:6,931戸、床下:12,363戸)
●支川及び中小河川氾濫
流域平均三日間雨量:326㎜
荒川上中流域でほぼ平均して大雨(三峰336㎜、名栗348㎜、
川越338㎜)となった。
岩淵地点最大流量:約5,930㎥/s
南畑排水機場(S62年)建設の契機となった。
1991年9月 平成3年 台風18号 秋雨前線と台風による豪雨 新河岸川など 浸水戸数:4,845戸
(床上:1,406戸、床下:3,439戸)
●支川氾濫 内水氾濫による支川や排水路沿川地域の浸水被害。
朝霞水門(H8年)建設の契機となった。
隣接する利根川水系綾瀬川流域では、草加市、越谷市、足立区で綾瀬川の洪水氾濫(堤防越流・溢水)による大規模な浸水被害が生じた。
(浸水戸数約22,700戸、浸水面積約3,300ha)
(堀切菖蒲水門建設の契機となった。)
1998年8月 平成10年 前線 前線性豪雨 新河岸川など ※川越市内の浸水被害
浸水戸数:3,840戸
(床上:1,632戸、床下:2,208戸)
浸水面積:約170ha
●支川氾濫  
1999年8月14日 平成11年 熱帯性低気圧 豪雨 入間川及び二次支川 浸水戸数:1,236戸
(床上:169戸、床下:1,067戸)
●支川及び中小河川氾濫
流域平均三日間雨量:354㎜、
治水橋上流域の平均三日間雨量:399㎜
上流の三峰観測所総雨量:497㎜
岩淵地点最大流量:約7,650㎥/s
熊谷・治水橋水位観測所で観測開始以来最高水位を記録。
上流ダム群と整備中の荒川第一調節池などの治水施設の
効果は見られたが、堤防未整備地区では浸水被害が発生した。
2005年9月4日から5日未明 平成17年 台風14号 秋雨前線と台風による集中豪雨 都区部西部の中小河川流域
(中野区、杉並区など)
浸水戸数:5,827戸
(床上:3,374戸、床下:2,453戸)
浸水面積:171.6ha
●中小河川氾濫
神田川、妙正寺川、善福寺川など8河川で溢水
時間雨量100㎜超(下井草観測所で112㎜/h、総雨量263㎜)
工事中の地下調節池にも排水
中野区・杉並区に災害救助法適用