利根川水系の洪水履歴
災害(水害)発生時期 災害名称 被災地域 災害の状況 要因 特徴 備考
西暦
年月日
和暦 (水系本支川、自治体名など) (浸水被害等の状況) (水文学的特色を含む)
1885年 7月、8月、9月 明治18年   7月:北川辺、渡良瀬川筋川辺村
下利根川
8月:横利根川
9月:下利根川
7月:浸水面積2,800ha 7月:台風 7月:中田地点の流量3,700㎥/s
北川辺・川辺村破堤、下利根川神崎橋向地先破堤
8月・9月:洪水
明治33年の改修計画策定の契機(参照元)となった。
1890年8月 明治23年   利根川水系   台風 中田地点の流量3,780㎥/s
利根川大洪水、逆川堤防決壊、
渡良瀬川大洪水、鬼怒川洪水
明治33年の改修計画策定の契機(参照元)となった。
1894年8月 明治27年   渡良瀬川流域 浸水面積:27,600ha 台風 中田地点の流量3,710㎥/s
渡良瀬川大洪水
 
1896年9月 明治29年 利根川大洪水 利根川水系 浸水面積:81,700ha 台風 中田地点の流量3,870㎥/s
利根川大洪水
中利根川、南相馬郡を除き茨城沿岸全部泥水に没す。
中川以東江戸川以西、総武線以北は大湖沼となる。
 
1898年 7月、9月 明治31年 東鬼怒川大水害
東京水害
7月:利根川
9月:渡良瀬川、利根川
    7月:利根川大洪水
9月:渡良瀬川、利根川大洪水
 
1907年8月 明治40年   利根川上中流域
渡良瀬川、小貝川など
浸水面積:78,000ha 台風
(8月中旬~下旬に4つの台風)
8/23~8/27の5日間雨量
下仁田623.8㎜、前橋168.9㎜、本庄276.9㎜
利根川本川右岸仁手村(現本庄市)地先で破堤(延長918m)
渡良瀬川・小貝川で破堤
明治44年改修計画策定の参照元となった。
1910年8月11日
(8月8日~13日)
明治43年 関東大水害
明治43年大洪水
東京大洪水
利根川水系流域全体
(関東平野一円)
※群馬県下の浸水被害等合計値
床上浸水:15,579戸、床下浸水:11,575戸
全壊家屋:2,121棟、流失家屋:2,796棟
2個の台風と低気圧停滞に
伴う集中豪雨・暴風雨
八斗島地点流量:6,960㎥/s(推定)
各所で河川氾濫、利根川治水の要といえる中条堤はじめ本支川の
いたるところで堤防決壊・越水が見られた。
関東平野一面浸水
(5月に利根川洪水、7月に霞ヶ浦洪水あり)
明治期における最大規模の洪水。明治44年改修計画策定の契機となった。
水系流域の中で、奥利根流域の出水は少なかったが、
吾妻川・烏川などの上流部支川で大出水となった。
利根川上流部の高水位は下記のS22カスリーン台風時を
上回っていたと考えられている。
1935年9月 昭和10年 昭和10年9月洪水 利根川水系流域全体
(上流水源域の豪雨)
※利根川水系氾濫地点9箇所の浸水被害合計
浸水家屋戸数:5,638戸
浸水面積:12,600ha
※東京の浸水被害
浸水戸数:61,000戸
浸水面積:62㎢(浸水期間:15日間)
前線性豪雨
(台風の前面の温暖前線)
吾妻川・烏川などの上流水源域に降雨が集中し、出水。
流域平均3日雨量(安食地点上流):193.8㎜
八斗島地点流量:9,030㎥/s
明治43年洪水を上回る
昭和14年増補計画策定の契機となった。
M43年洪水の水位に比し、栗橋で1.35m、
佐原で1.47m上回った。
1938年6月28日~7月8日 昭和13年 利根川洪水 利根川水系
(中下流域が主)
※利根川水系全体(中川流域含む)の浸水被害
浸水面積:214,500ha
梅雨前線と台風による大雨 八斗島地点流量:2,850㎥/s
平地性豪雨(霞ヶ浦流域平均3日雨量は約400㎜)
利根川中流部以上の鬼怒川、荒川などの河川は中洪水。
利根川下流部、霞ヶ浦、印旛沼、小貝川は大洪水。
渡良瀬川中下流、鬼怒川、利根川下流部、中川下流で被害大。
昭和14年増補計画策定の契機となった。
霞ヶ浦の湖水位は既往最高のY.P+3.34mを記録
1941年7月10~13日
7月19~23日
昭和16年   利根川水系
(中下流域が主)
浸水面積:200,000ha(推定) 関東北部に停滞の梅雨前線と
台風による大雨
7/20~7/22の3日雨量
鬼怒川・渡良瀬川上流域:300㎜以上、
烏・神流川流域:200~300㎜、平地部:200~250㎜
八斗島地点流量:8,990㎥/s
利根川本川堤防欠損
中小河川の破堤による浸水・冠水被害大
7月中旬の前線性豪雨洪水が減水しないうちに下旬の
台風で増水し、異常な高水位となった。
(栗橋より下流では既往最高水位を軒並み上回った。)
1947年9月14~15日 昭和22年 カスリーン台風災害 利根川水系流域全体
(関東地方一円)
※利根川水系流域を含む1都5県の浸水被害等合計
浸水家屋:303,160戸、流失倒壊家屋:23,736戸
半壊家屋:7,645戸
田畑の浸水(冠水):176,789ha
台風襲来前の長雨と
台風(9号)に伴う大規模豪雨
八斗島地点流量:17,000㎥/s(推定)
本川及び渡良瀬川では、全川にわたり計画高水位を上回った
流域平均3日雨量(八斗島上流域):318㎜
戦後最大、大正・昭和でも最大の水害
上流域山間部で土石流災害、扇状地急流河川での洪水土砂災害、
中流域で破堤災害、沖積平野での氾濫・浸水
既往最大洪水として、水系の河川改修工事計画の
改訂(昭和24年改修計画)をはじめ、水害対策
見直し検討の契機となった。
1948年9月16日 昭和23年 アイオン台風災害 利根川水系中下流域
(南関東一帯)
※利根川本川筋渡良瀬川の浸水被害合計
床上浸水:829戸、床下浸水:1,523戸
台風(21号)による豪雨 流域平均3日雨量(八斗島上流域):204㎜
布川における最大流量はS22カスリーン台風を上回った
関東南西部山間地の豪雨による洪水
東京湾・相模湾で高潮被害発生
下流域・河口部の浸水被害は高潮によるものが重なる。
1949年9月1日 昭和24年 キティ台風災害 利根川水系中下流域 ※渡良瀬川、鬼怒川、江戸川の浸水被害等合計
床上浸水:3,696戸、床下浸水:1,792戸
流失倒壊家屋:639戸、半壊家屋:1,044戸
浸水面積:4,284ha 
台風(10号)による豪雨と
満潮時の高潮
流域平均3日雨量(八斗島上流域):204㎜
八斗島地点流量:10,500㎥/s
高潮の影響による水位上昇が著しく、江戸川河口部などでは
異常高潮と烈風で大きな被害を受けた。
下流域・河口部の浸水被害は高潮によるものが重なる。
1950年8月3日 昭和25年 昭和25年8月洪水 小貝川流域・利根川中下流域 ※小貝川破堤による浸水被害
浸水戸数:3,517戸、浸水面積:2,400ha
※利根川下流全域の浸水被害
床上浸水:5,326棟、床下浸水:142棟
倒壊・半倒壊家屋:1,874棟
浸水面積:3,296ha
2つの台風 流域平均3日雨量(安食地点上流):180.0㎜
流域平均3日雨量(八斗島上流):151㎜
八斗島地点流量:8,640㎥/s
小貝川堤防決壊(同年9月にも小貝川破堤)
布川・佐原ではS24年改定の改修計画の計画高水流量を
上回る水位となった。
小貝川下流部の破堤、浸水被害は、利根川本川からの
逆流によるもの。
1958年9月18日 昭和33年 狩野川台風 小貝川流域・利根川中下流域 ※中川流域における浸水被害
床上浸水:29,900戸、浸水面積:28,000ha
台風22号 流域平均3日雨量(八斗島上流域):168㎜
八斗島地点流量:9,250㎥/s(戻し流量)
小貝川支川、大谷川の越水による氾濫・浸水被害
利根川下流部、印旛沼、根木名川、大須賀川、黒部川、常陸川、
渡良瀬川支川、尾名川、小貝川などの内水氾濫による浸水被害
平野部で豪雨があったため、平地河川の洪水と内水氾濫
による浸水被害が大きい。
1959年8月14日 昭和34年   利根川下流部・鬼怒川洪水   台風7号 八斗島地点流量:8,330㎥/s(戻し流量)
流域平均3日雨量(八斗島上流域):214㎜
鬼怒川上流域の豪雨(8/12~8/14の雨量)
中宮祠:765㎜、黒部:659㎜
利根川各川・各所で護岸、水制の流失、田中・菅生遊水地の越流堤破壊
 
1966年6月26日 昭和41年   渡良瀬川、小貝川、綾瀬川・中川 半壊床上浸水:6,778棟、全壊流失:2棟
床下浸水:33,328棟
農地:41,505ha、宅地その他:10,739ha
※綾瀬川を含む中川流域の浸水被害
浸水戸数:約2,400戸、浸水面積:約35,000ha
台風4号 八斗島地点流量:6,040㎥/s
流域平均3日雨量(八斗島上流域):162㎜
各所で護岸・水制等の流失‐田中・菅生遊水地の越流堤破壊
 
1966年9月24日 昭和41年   利根川上中流域、渡良瀬川流域など 半壊床上浸水:2,250棟、全壊流失:161棟
床下浸水:5,212棟
農地:14,988ha、宅地その他:7,119ha
台風 八斗島地点流量:6,040㎥/s
流域平均3日雨量(八斗島上流域):130㎜
榛名白川、大沢川、車川等洪水氾濫
 
1974年9月1日 昭和49年     床上浸水:97棟、全半壊:5棟
床下浸水:2,689棟
農地:773ha、宅地その他:475ha
台風 八斗島地点流量:5,960㎥/s(戻し流量)
流域平均3日雨量(八斗島上流域):119㎜
 
1981年8月23日 昭和56年   利根川水系 中・下流域 床上浸水:269棟、全半壊:3棟
床下浸水:646棟
農地:1,568ha、宅地その他:120ha
台風 八斗島地点流量:8,280㎥/s(戻し流量)
流域平均3日雨量(八斗島上流域):221㎜
小貝川高須で堤防決壊
昭和34年8月洪水以来22年ぶりに利根川に警戒警報発令
1982年8月2日 昭和57年     床上浸水:137棟、全半壊:4棟
床下浸水:1,478棟
農地:234ha、宅地その他:130ha
台風 八斗島地点流量:9,100㎥/s(戻し流量)
流域平均3日雨量(八斗島上流域):221㎜
7/31~8/3の西部と北部の山間地総降水量は300㎜を超え、利根川本川は
上流部から下流まで警戒水位を超えた。
栗橋地点で計画水位5mを3.3m上回り、最大流量は11,118㎥/sを
記録した。→この地点での既往最大流量の記録を更新した。
1982年9月13日 昭和57年     床上浸水:7,242棟、全半壊:3棟
床下浸水:27,649棟
農地:4,273ha、宅地その他:4,690ha
台風18号 八斗島地点流量:8,400㎥/s(戻し流量)
流域平均3日雨量(八斗島上流域):214㎜
 
1986年8月4~5日 昭和61年 利根川水系中・下流域
(小貝川流域・綾瀬川沿川など
栃木県・茨城県・埼玉県)
※小貝川沿川(筑西市など)の浸水被害
浸水戸数:4,500戸、浸水面積:約4,300ha
※綾瀬川沿川(越谷市・草加市など)の浸水被害
浸水戸数:約9,000戸、浸水面積:約1,400ha
台風(第10号)とその後の
温帯低気圧・前線による大雨
小貝川流域平均雨量(24時間)が300㎜超
小貝川全川で計画高水位を超えた。(黒子地点の流量:1,320㎥/s)
小貝川、五行川等一次支川での氾濫・破堤→下館市の1/4が浸水。
綾瀬川でも越水し浸水被害。
 
1998年9月10日 平成10年     床上浸水:98棟、全半壊:2棟
床下浸水:1,176棟
農地:623ha、宅地その他:759ha
台風5号と前線 八斗島地点流量:9,960㎥/s(戻し流量)
流域平均3日雨量(八斗島上流域):186㎜
栗橋地点ではS22年カスリーン台風以降、戦後3番目の流量を記録。

出典資料・データ等の所在
 ・利根川水系河川整備基本方針及び同策定資料(国交省)
    利根川水系河川整備基本方針
    基本高水等に関する資料
    利根川水系流域及び河川の概要
 ・下館河川事務所HP
 ・霞ヶ浦河川事務所HP
 ・渡良瀬川河川事務所HP
 ・高崎河川事務所HP
 ・利根川上流河川事務所HP
 ・利根川下流河川事務所HP
 ・江戸川河川事務所HP
 ・茨城県地域防災計画
 ・栃木県地域防災計画
 ・群馬県地域防災計画
 ・埼玉県地域防災計画
 ・千葉県地域防災計画
 ・東京都地域防災計画