著書紹介:  地図を学ぶ人の必読の書 『神の眼、鳥の眼、蟻の眼』

訪問インタビュー 《座談会》 から

  話し手:森田喬教授(法政大学工学部都市環境デザイン工学科
  
  聞き手:利満慎一(NPO法人 まちづくり情報センター《NPO-TMIC》理事長)


森田


 地図に期待するのは、見たかったものを見ることができる!それが基本であって、何もバーチャルリアリティとか写真に写したものを載せるとか、そういうのはほんの一部ですよ。地図の能力とかポテンシャルはそこにある。

 こうしたことを考えるようになってから、『神の眼、鳥の眼、蟻の眼』(毎日新聞社)が出来ました。これを是非見て読んで欲しい


利満


 
おもしろいですね。これだけたくさんの地図(ネタ)を良く集めたなと感心します。

森田

 毎日新聞の日曜版別冊に『日曜くらぶ』と言うのがあって、半ページをもらって連載で掲載した記事を本にまとめたものです。

 
この連載で、こうした世界各国の地図のバリエーションをみて、やっぱりそうなんだよなと思って、こうした今の論点(今後の方向性)につながっているわけです。

この連載(1997.10-1998.9)は、週一回の連載なので資料集めが大変で苦労しましたが、おもしろい企画なので、編集者の人に『いつまでやるの』と聞いたら、つまんなくなれば『そこでお終りです』と、非常にはっきりしていて(大笑い)、さらに『疲れたので日曜日くらいは休みたい』と言ったら、休んだら『そこでお終いです』と言われてしまいました(大笑い)。非常に厳しい。  

利満

 
そういう厳しい編集者がいたので、こうして有意義な『本』にすることが出来たんでしょうね。きっと(大笑い)。

 是非、この本は『お勧め』として積極的に紹介していきましょう。

 
 目 次

 
 第一章 地図は想像の翼を動かす
 

 土地の魅力の表現には「誇張と省略」が効果あり 

 物語誕生のきっかけとなるような地図を作ろう! 

 鴎外と漱石、方向感覚の違いで知る新たな魅力 

 「ここはどこ?」古い地図で今いる場所の昔を知る 

 時空を自由に飛び、空想の世界を遊ぶ 

 背景に質感ある地図や地球儀を描いた9枚の絵 

 地図や図面を使っての思考、もっと普及させたい 

 宇宙への興味が続く限り続く「地図作り」 

 「鳥のように眺めたい」鳥撤図の答えは多面的 

 地球儀のような丸い形は象徴性が生まれやすい 

 世界最大の地球儀を日本に!の会でも作ろうか 

 地図を有効利用して夢空間、桃源郷を育てよう 

 
 第二章 地図の使われ方

 「住所」で目的地に着けるフランスとダメな東京 

 産物の素性を地図上で明かせば、「夢」が広がる 

 観客側と管理側、地図のありようはまったく違う

 現在位置と方向にこだわる自分だけの地図を作る 

 モダン・デザインの薫り+もうひと工夫ほしいな 

 英日併記で知る「異文化は地図上でも併存し難い」 

 便利なトイレ・マップ。日本で市民権を得るかけ 

 自然との共生図る都市計画に、よい背景図は不可欠 

 刻々と変わる現実。うその描写の許容範囲とは

 動的な経過の表現で、重要な役割は1矢印! 

 知りたい情報をすばやく理解するための高等技術

 空間の理解には視覚以外の感覚もフルに使おう!

 「現在地を確認する」これ、日本では難しいよなあ

 広場のような求心力を持った、不思議な空間


 第三章 人はアートのように地図を創造する 

 感覚器を総動員して味わう地図の原点 

 文字の出現より早く人は空間を表現していた

 「記号と説明」の折り合い、それが問題だ 

 先の見えにくい今こそ、自作の海図が必要だ! 

 自分が本当に実感できる空間は意外に小さい? 

 いざという時に変身できる紙のマジック 

 実際の地形を平面に描く、一筋縄ではいかないな 

 富士山を富士山らしく見せた浮世絵師の優れた感覚

 知りたい情報が立体的な場合の表現方法とは

 海流やうねりと島々の関係を示す自由発想な海図 

 目印が見えなければ、地図作りは難しい 

 海底の地形にも陸地並みのイメージを持ちたい 

 衛星画像で非日常的な逆転現象“が生まれる怪

 踏みしめられるほど大きな地形模型、ほしいなあ 

 
 第四章 世界認識のタイムトラベル

 見慣れぬ地図の源流を探る、なんと魅力的なことか

 「日本最古の地図」はどこに埋もれているのだろう

 「部分から全体へ」の発想は日本文化のひとつの特色

 自分の国の形は、自ら発信すべきものなのだ

 未知への憧れに乏しい日本的世界観は今も息づく

 無味乾燥な道路図に、美的な表現はできないものか

 日本が持つ「辺境感」は、ぬぐい去りたいものだ

 時代が望むヨーロッパ人の「自己中心的世界観」