参考情報  (出展 2008.7.7 日本経済新聞 記事抜粋)  

      
 『官から民へ』 成果の芽 図書館、県庁窓口・・・広がる運営委託

 日経2008.7.7版に、指定管理者制度の運用状況に関する取材記事が掲載されました。企業、NPO法人など民間委託により、各地からコスト減、便利さ、サービス向上の事例が報告されています。その一方で、採算がとれず委託中に撤退するケースも13件が報告されています。抜粋して紹介します。 

 
 公共施設の管理・運営を民間に任せる指定管理者制度
始まって間もなく五年。企業の参入が増え、コスト削減やサービス向上心一定の効果を上げている。半面、採算性の悪化などを理由に契約期間の途中で撤退するといった問題が新たに浮上してきた。「官業の民間開放」の流れをどう定着、拡大していくかが今後の課題だ。

 東京都大田区立蒲田図書館には「赤ちゃんの授乳、おむつ替え希望の方はスタッフに相談して下さい」と書いたポスターが張ってある。職員に声「官から民へ」成果の芽を掛けると、二階の空き部屋に案内してくれる。今年二月に始めたサービスだ。一歳の男児を抱いて来館した著述業の藤堂利寿さん(38)は「すごく助かる」と話す。
 
 大田区は2007年4月、区立の15図書館のうち14館に指定管理者制度を導入した。蒲田図書館はイベント企画会社など二社の共同企業体が受託した。
 
 館長に就いた三橋昭さんは医療への関心が高い高齢者の利用が多いことに着目。「患者・家族が書いた闘病の記録」コーナーを新設すると、五年間一度も借り手のなかった書籍が毎月貸し出されるほどになった。
 
 休館日の第二木曜日にはスタッフを集め、利用者の意見や苦情を基に改善点の周知を徹底する。
利用者アンケートでは接客態度の向上を評価する声が多いという。
 
 指定管理者制度の導入効果もあり、07年度のコスト滅、便利さ向上区立図書館の人件費、委託費、物件費など運営コストは前年度比約15%減少した。区は図書館以外でも同制度の採用を進めており、区民ホールや老人ホーム、球場など99施設で導入済みだ。
 
 官業の民間開放には別の手法もある。佐賀県は06年度から「提案型公共サービス改善制度」と呼ぶ独自施策を展開。全業務を公開して民間から提案を受けている。公共サービスの担い手を官と民が競争入札で決める市場化テストのいわば「佐賀版」だ。 発達障害の小中学生を校外で個別指導する事業は今年、非営利組織(NPO)に運営委託して実現した。また県庁の総合相談窓口の運営を民間に任せたところ、相談件数は二倍近くに増えた。民間開放で県民サービスが向上した成功例だ。
 
 県は07年度、2350事業を民間に公開し、102事業の提案を受けた。このうち電話交換や未収債権回収など67事業を採用した。情報・栗野改革課の中島修副主査は「すべての業務を公開ずることが重要」と指摘する。07年度に県が民間に開放できると考えられる16事業に対し、民間からの提案は18事業しかなかったからだ。逆に残りの民間提案の84事業は県が開放できないど考えていた事業だった。全部公開しなければ、こんなミスマッチが起きる。
 
 ただ7年度は提案件数が初年度の約3分の1に減った。その打開策として今年度から、制度運営自体を民間と一緒に実施することにしている。

※以下要点抜粋 (詳細は原文を参照、確認されたい

公共施設運営への企業の参入状況
 日本経済新聞の調査によると、全都道府県と727市区で企業が運営を受託した施設は6680とこの2年間で倍増した。ただ、同制度を導入した5万9百施設で指定管理者を公募したのはわずか三九%で、企業の参入機会が少ないという問題も浮き彫りになった。(07日発行の「日経グローカル」に詳報)

水戸市の事例 
 最初の5年間は非公募で従来の委託先を指定する方針をとった。この結果、346ある導入施設のほとんどを今も外郭団体が運営している。

●愛媛県の事例 
 公共施設の大半で公募を行わず外郭団体を管理者に選んだ愛知県では、外部監査をした公認会計士が昨年末、「非公募施設は公募に比べ経費削減率が小さい」と選定方法の見直しを迫る知事に報告書提出した。

指定管理者制度は経費削減や利便性向上に一定の効果を上げる一方、施設運営などを受託した民間業者が契約途中で撤退するケースも目立つ。
 
 学童クラブの運営を委託していた社会福祉法人伊賀市社会事業協会が突然、「運営が困難になった」と指定管理者の一部返上を申し入れてきた。希望児童の増加に指導員の確保が追いつかない。「一人ひとりの子供をずっと見守るきめ細かいケアができるか不安だった」ため、4カ所の運営から撤退した。
 
 民間業者の撤退理由
で多いのは事業の採算悪化や本業の経営難だ。宮城県東松島市では駅前複合施設の運営を受託した共同企業体が赤字を理由に昨年5月末で撤退した。神戸市ではリゾート型宿泊施設の指定管理者になっている地元ホテルが本業の経営悪化を理由に、八月末で撤退する。

委託期間中に撤退した事例
 調査では、運営を受託した企業などが採算悪化などで契約期間中に撤退や経営破綻した施設は39自治体の約60カ所にのぼった。安易に参入した民間側にも問題はあるが、公共サービスの担い手としてふさわしいかどうか十分見極められなかった自治体の責任も重い

自治体 対象施設 撤退した 指定管理者
岩手県 宮古市 タラソテラピー施設 第3セクター
宮城県 東松島市 駅前複合施設 民間2社の共 同企業体
群烏県 ヘリポート 民間企業
東京都 葛飾区 駅前再開発ビルの駐車場・駐輪場など 企棄・NPO のグループ
新潟市 老人福祉センター 民間企業
岐阜県 下呂市 デイサービスセンタ - (言十2カ所) 民間企業
三重県・ 伊賀市 学童保育施設  (計4カ所) 社会福祉法人
神戸市 自然休養村管理施設 民間企業
馬取市 レクリエーション施 設 林業振興協業組合
愛媛県 宇和島市 観光文化センター 青果農業協同 組合
長崎県 大村市 情報交流プラザ 学校法人
大分市 市営住宅(1220戸分) 民間企業
官崎県 都城市 温泉施設 民間企業
※用語の解説 指定管理者制度 

 「官業の民間開放」の一環として2003年の地方自治法改正で誕生した。公共施設の管理・運営への民間参入を進め、効率化やサービス向上を図るのが目的。自治体が設置する公園や図書館、体育館、福祉施設などの運営を企業や非営利組織(NPO)に委託できるようになった。